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「そうじゃない、ずっと前から一人ぼっちだったんだと思う」
「いつから」僕が聞いた。
「はっきりとは、言えないけど、EGGセンターに呼ばれた時からかもしれないし、もしかするとそのずっとまえからのような気もする」
「なぜ、そんな気がするの?」
ミウは困った顔した。
「それは上手く説明できない」
エレナは首を横に振った。それを見てミウは黒崎さんに向かって語りかけた。
「おじさんたちが思ってるより、私たちの年頃の女の子の心はふあふあで、男の子とは違ってて、大人への準備に入る頃だし、とっても不安定で」
「そうなんです」
アユタが僕の肩越しに口を出してミウに睨まれた。
「おじさん達は、EGGの完成が大事で、有人飛行をする事が夢で、そのためにはエレンが必要で、でもエレンはただの女の子で、そんなエレンにおじさん達は何をしてあげたんだろうって、エレンはずっと悩んでたんじゃないかって、一人ぼっちじゃなかったのかって」
「上手く言えなんだけど」
ミウは僕とアユタに話した時と同じに困った顔になった。
そのまま、黙ってしまったエレンに代わって僕は黒崎さんとおじさんに、これは僕の想像なんだけどと断ってから僕の正直な思いを伝えた。
「エレンはミウの言うとおりずっと前から一人ぼっちだったのかもしれない。生まれつき目が不自由だったこともあるのかもしれない。僕らが当たり前だと思っている世界。エレンには当たり前じゃない世界。エレンが当たり前だと思っている世界。僕らには当たり前じゃない世界。エレンの目が見えるようになったとき、喜んだんだろうかって。
僕は経験がないけれど、僕が思うに転校した学校に始めて登校した教室で見慣れない同級生を前にしている自分。言われるがままに机に座って、周囲を見る余裕もない。俯いて一人でいる。そんな感じじゃないだろうかって。賢いエレンはずっと耐えていたんじゃないかなって。僕だったら文句の一つも父さんや母さんに言っただろうに。
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