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そうした中でエレンはEGGのあの事故に遭った。切断されたインターフェースウィットが一瞬のうちにエレンを一人ぼっちにした。それは、それまでエレンが感じていた一人ぼっちとは異質なものだった。何も見えない、何も聞こえない、声を出しても誰れも返事をしない。ついさっきまで、手を伸ばせば傍にあった現実が突然に消えしまった。それまでも、ずっと一人ぼっちだったエレンに決定的な一人ぼっちをもたらしたんじゃないかって」
生まれて初めてだったこんなに長く真剣にしゃべったのは。アユタもミウも僕に同意の眼差しをくれた。そして最後に付け加えた。
「僕はこうも思いました。もしかすると、それはたぶんエレンが選んだんじゃないかって。もしそうだとしたら、エレンの方から目を覚ましてくれんじゃないですか?」
上手く説明できたか、伝わったのか心配だったけど、しばらくして黒崎さんが口を開いてくれた。
「そうかもしれないね。私はエレンの目が生まれながらに不自由だったことが不憫でならなかった。
それを私がやってきた研究で治すことができるんであれば、それがエレンの幸せだと思い込んでしまっていた。
そういえば、エレンは学校に通うより、私の研究室にいる時間の方が長かった。一日でも早くエレンに色んなものを見せてあげたいという私の思いがエレンの自由を奪っていたのは事実だ。
やっとの思いで開発した視覚センサーで始めてエレンの目が見えるようになった時は、私も妻も大喜びだった。これでエレンも普通の子と同じになったって。
私は、エレンの目を治すことに夢中になっている間に、エレンの大切な時間も奪っていたのかもしれない。エレンの都合も考えずに。
みんなの言うとおり、エレンは特別な子ではなかったんだね。みんなと同じ普通の子だったんだ。私はエレンに愛想をつかされたのかもしれないね」
黒崎さんが話し終わるのを待ってアユタが口火を切った。
「で、僕達はエレンをボッチにしないことにしたんだよね」僕を見た。
「僕らはエレンの友だちになると決めました。エレンがそれを喜ぶかどうかなんてわからない。受け入れてもくれないかもしれない。どれだけの時がかかるかのかもわからない。当然エレナの反応は知る由もない。それでも友だちになれるかどうかを試してみよう、お願いしてみようと考えました」ミウを見た。
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