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「もし、エレンとエレナが通じ合うことができるなら、あたしたちもエレンと友だちになれるチャンスがあると思います」
僕ら三人は、そこに「キボウ」は残っているんじゃないかと思った。
エレナが不思議そうな顔をして僕らに視線を廻らせている。
「エレナは、もう友だちだよ」
ミウが気が付いて話しかけた。
「トモダチ?」
「無駄なことかもしれない。それでもいい。僕らは時間の許す限り、エレンに語りかけて、いつか僕らのことを知ってもらって、友だちになりたい。そのためにはエレナの力が必要なんだ。他の方法じゃダメな気がする」
「僕も友だちが語りかけなきゃダメな気がする。だったら、僕らのお友だちのエレナしかいないよ」
アユタが満面の笑顔でエレナに言った。
もし通じあえれば、僕らのことにも気が付いてくれて、興味があったらエレンの方からいつか話しかけてくれる日が来る。
僕らは、その日が来るまで絶対に諦めない決心を今ここでしたんだ。
黒崎さんにたとえ何と言われようと。毎日は無理でも、必ず四人でここに訪れて、エレンに話しかけて、友だちになる。
「これって、なんかあれみたいだね」
「あれって何よ」
ミユがアユタをまた睨んだ。
「知らない、昔、アマテラスという女の神様が乱暴者のスサノヲっていう弟に腹を立てて、岩穴に隠れて入り口を大岩の戸で閉じちゃたんだ。困った他の神様達が、なんとかして出てきてもらおうと一計を案じて、その岩穴の前でお祭り騒ぎをしたらしいんだ。ダンスの得意な神様が踊ったり」
「それで」ミウの目はまだ険しい。
「大岩の向こうから賑やかな音や踊りに喜ぶ大歓声が聞こえてきた。アマテラスはその騒ぎが気になってしょうがいない。とうとう我慢できずに岩の戸をちょっと開けてしまったんだ。そして隙間から外の様子を伺ったんだ」
「それから」僕が先を促した。
「その隙間を見つけた神様たちが、チャンスとばかりに岩の戸をこじ開けて、アマテラスを引っ張り出したってお話し。因みにアマテラスって太陽の神様だよ。だから、世の中に太陽が戻ったってこと」
ここまで言うとアユタは満足気な顔をした。
「で、このミッションを天の岩屋作戦。コード名を『アマテラス』とします」
「なんじゃそりゃ」と僕が言うと
「わけわかんない」とミウも言った。
「古事記だよ」アユタは不服そうだった。
おじさんも、黒崎夫妻も、声を出して笑っていた。
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