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エピローグ
あれから三年が過ぎた。僕らは中学二年生になっていた。月に一度、エレンを訪ねるのにも、いつの日からかおじさんに伴われることもなくなっていた。電車やバスを乗り継いでそれぞれが勝手にやって来ていた。
僕らは今日もエレンが眠る部屋に四人でいた。
ミカ姉さんと同じ隣町の女子校の中等部に進学したミウと会うのはひと月ぶりだった。互いの生活時間帯が変化したのかマンションで会う事がめっきりと少なくなった。
最近ミウは女だてらにもプロレス同好会を学校で立ち上げ、問題児となってるらしい。
後で知ったことだが、ミウのお父さんは昔プロレスラーで、引退後にこの町のスポーツジムのインストラクターになって家族で引っ越して来た。それを知ったドームおじさんは、運動不足の解消にとか理由をつけてジムの会員になった。本来の目的はミウのお父さんと知り合いになりたいのだと言う事はミエミエだった。
一方、アユタは歴史オタク街道まっしぐらで、自分の家の旅館が旅籠を始めた頃について調べ上げたりして、町ではちょっとは名の知れた一人前の郷土史家を気どっていた。今日はなぜかアユタの旅館の名をうった法被を羽織っていた。最近は少しずつ旅館の手伝いもしているらしかった。
僕はと言えば、中学になって始めて運動部に所属して、今ではサッカー部の立派な補欠として体力づくりに余念のない毎日を送っている。それと言うのも、一年後に開校されるJASA主導による宇宙航空専門校に進学しようと画策していたからだった。母さんは普通の高校に進んで大学に行ってもらいたいようだったけれど、父さんはエラク乗り気だった。僕の動機は単純で、たとえEGGに搭乗できないとしても、何となく宇宙に関わりたいという気持ちは、あの時芽生えて以来、不思議と萎えることなく今も続いていた。
エレナは、ドームおじさんの勧めでエレンの介護ロボットとして黒崎さんの家で過ごしていた。黒崎夫妻は最初恐縮しながらもそれを喜んで受け容れた。それでも、一人暮らしになったおじさんを心配した黒崎さんが月の三分の一ぐらいはエレナをおじさんの家に行かせているようだった。
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