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放課後。
自転車を飛ばし、多摩川を目指した。
予知夢のことを確かめたかったからだ。
子供の頃から、私には未来を予知する力があった。
その力はいつもあるわけじゃなく、時々やってくる。
そして大半は現実になる。
事故、殺人、病気、けが、自殺……。
内容は悪いことばかり。
幼かった私は、予知がある度に恐怖に震えていた。
親父とおふくろにも話したけど、偶然だって言うばかりだった。
それ以来誰にも、その話をしなかった。
小学三年ととき、通学路で起こる殺人事件を予知してしまった。
犯人は小学校の近くで見かける大学生だった。
次の日、その大学生は元カノだった女子大生を通学路で刺し殺した。
私は恐怖に耐えられず泣きながら婆ちゃんに電話した。
婆ちゃんの優しい声が電話から聞こえてきたとき、私は心に溜まっていたものを全て吐き出した。
黙って聞いていた婆ちゃんは私の話を疑うことなく信じてくれた。
自分も若いとき霊感が強くて、よく幽霊を見たらしい。
でも子供を産んだら霊感がなくなったそうだ。
私の予知の力もそのうちなくなるから安心して良いって。
それに、予知が当たって誰かが死んだとしても私のせいじゃなく、その人の運命だからしょうがないとも言ってくれた。
婆ちゃんに全てを話してさっぱりした後、私は予知を恐れなくなった。
でも罪悪感は残る。
だから知り合いの人に関する予知があったときは、それとなく注意することにしてる。
まともに私の注意なんか聞く人いないけど、一応ね。
中央道の高架下を抜けて、小柳町から変電所の横を通り、多摩川の土手の上を走るサイクリングコースへ入った。
土手には青々とした草が茂ってる。
紅白の鉄塔を前に見ながらサイクリングコースを走る。
久しぶりの多摩川。
昔はよく走りにきたんだけど。
河川敷には午後の太陽の光が斜めに射して、黄みがかった色で周囲を染める。
散歩する人、スポーツする人、河を眺める人、いろんな人が思い思いに多摩川を楽しんでる。
しばらく行くと土手沿いにパトカーやバンが並んで止まっているのを見つけた。
側には制服の警官がいて辺りを見回してる。
河川敷の端に警官や報道陣、野次馬が集まっている場所があった。
土手に自転車を止め、斜面を下った。
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