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イラついた私はキレ気味に言った。
「勝手なことすんなよ。球技大会なんてお遊びだろ。私はヒマじゃねぇんだ」
予知夢のことが頭を過ぎった。
日浦は顔の前で人差し指を振り、憎たらしい口調でまくしたてる。
「ちっちっちっ、おぷとみすちっく、命連寺さん。授業の成績だけじゃなくて、課外活動も調査書の対象になってるのよ。推薦入試をする人にとっては調査書の評価をあげることはマストなんだから。遊びじゃないの」
「だとしても、私には関係ない」
「確かに調査書は個人的評価かもしれないけど、クラスの勝利によって当人の課外活動に対する積極性が向上し、評価が上がる可能性もありうるでしょ」
「ああ? 何言ってんの。日本語喋って」
「とにかく、ミーティングに出て、お願い。じゃないと私、クラスから怒られちゃう」
日浦は目に涙を溜めて、私に手を合わせる。
?泣きだろがっ!
日浦の横を抜けて脱出をはかった。
「そんなんじゃ、友達できないよ」
胸をえぐる言葉。
私は立ち止まり、両拳を握り締める。
「命連寺さん、いつも一人じゃない。グループに分かれるときでも数合わせで入ってるって感じ。それで楽しい?」
虐められていた頃の記憶がよみがえる。
クラスメイトから無視され、ののしられ、孤立した私。
「あんたみたいな優等生にはわからないさ……。きっと今まで明るく楽しく学校生活をエンジョイなさってきたんだろ。でも、どん底に落とされたやつは、そうそう普通には戻れない。友達なんて、いざとなると簡単に裏切るんだよ」
友達、仲間……。
なんて軽い言葉だろう。
日浦にわかるはずがない。
「命連寺さん……?」
気遣わしげな日浦の声。
同情されるのもムカつく。
「球技大会なんて出ないから……」
私は逃げるようにその場から離れた。
日浦の言葉に心が、かき乱される。
私は家に帰る気にならず、府中駅の周りをぶらついていた。
親父達は知り合いの葬式があって、八王子まで出かけてるから家には誰もいない。
午後六時。
街の灯りが派手に輝いて、夜の闇を吹き払う。
でもどんなに綺麗な灯りでも私の心の闇は吹き払ってくれない。
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