玉勝間

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 こんなんじゃダメだって、わかってる。  でも怖い。  心を許し、信じた人達に裏切られることが。  うつむきながら歩いていると人影が道を塞いだ。    「命連寺。何たそがれてんだよ」  倉科が不敵な笑みを浮かべて立っていた。  私は露骨に嫌な顔をしてみせた。 「そんな顔すんなよ。随分探したんだぜ」 「先輩、何の用ですか。私今マジへこみ中なんすけど」 「ちょっと私らに付き合ってくれよ。颯がお前に会いたいんだって」  倉科の後ろには男が五人いて、嫌な目つきでこっちを見ている。  男達は全員緑色のバンダナを左腕に巻いていた。  年は倉科と同じか上だろう。  みんな顔は最悪。  カラーギャングってこいつらか。  私の鼻がエマージェンシーの臭いを察知する。  やっぱこれだわ。  私にはこれが合ってる。  心のモヤモヤをこいつらで晴らそう。 「いいですよ」  男達は二手に別れ、二人が私の前に、三人が後ろについた。  倉科は前の二人のすぐ後ろを歩く。  逃がさないようにしてるんだろね。  こっちは逃げる気ないのに。  駅を離れ、二十号線を渡り、西へ向かう。  小学校の手前を右に曲がる。  そのまま校舎の裏側へ回り込むように進むと人気の無い公園があった。  木々がまばらに立ち並ぶ公園に灯りは無く、周囲の光でうっすらと顔が見える程度だった。  中に男子がたむろっている。  数えてみると二十三人。  全員左腕に緑色のバンダナを巻き、バットや鉄パイプを持ってる。  決して良い感じの雰囲気じゃない。  私を囲んでる奴らを合わせると全部で二十八人てわけだ。  でも女子高生一人に得物を持った三十人近い男って。  恥ずかしくないのかな。  それだけ私のことを調べたってこと?  じゃあ遠慮は、いらないよね。  モーニングスターってあだ名の意味をたっぷり教えてやる。  男達の前に相田の姿があった。   相田は腕を組み、イライラと指を動かしている。  やってきた私に相田は忌々しそうに言う。 「命連寺ぃ、この前は世話になったな」 「相田先輩、まだ男の子ですか?」  股間を蹴飛ばして以来の再会だった。  相田は歯をむきだし、私を指差す。 「あのあと熱が出て、三日寝込んだぞ! 今もまだ痛ぇし」 「ダメならニューハーフっていう道もありますけど」 「てめ、おちょくってんじゃねぇぞ!」  周りの男達が怒鳴った。  私は肩をすくめる。  
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