玉勝間

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 脱衣所でパジャマと下着を脱いで洗濯機に投げ込む。  六月なのに、ちょっと寒い。  シャワーから出る熱めのお湯を腕にかけ、徐々に背中へ回す。  皮膚が、ちくちくするくらいの熱さが逆に気持ち良い。  ボディーソープで身体を洗った後、バスチェアに腰かけてシャンプーを手に取る。  鏡を見ると少年のような女の子が見返してる。  黒目がちの円らな瞳。  ふっくらとした小さめの唇。  ベリーショートの髪。  髪が短いと洗うとき、ほんと楽だ。  中学のときは肩までのミディアムだった。  お嬢様ぽくて男子にもモテまくった。  自慢じゃないけど、周りにある中学や高校の男子まで押しかけてくるありさまだ。  でもそれも中二までのこと。  クラス替えした中三は地獄だった。  クラスを仕切るセレブ気取りの馬鹿女に目をつけられた。  無視された後は、お決まりの暴力……。  ボロボロになって部屋に閉じこもった。  家から外に出ることができなくなってた。  頭皮を指でこすりながらシャンプーを泡立てる。  早起きしての朝シャン、いいね。    閉じこもっていた私を助けてくれたのは婆ちゃんだった。  埼玉県の熊谷市で一人暮らしをしていた婆ちゃんは、私のことを心配して府中市にある我が家にやってきた。  四十年以上前、婆ちゃんは関東で最強と言われたレディースの頭をはってた。  婆ちゃんの激熱な魂に触れた私はエナジー120%になった。    三ヶ月後、登校した私はセレブ馬鹿女とタイマンはって叩きのめした。  そっからの私は別の意味で目立つことになる。  虐めた奴らを片っ端からぶっ飛ばした。  私には婆ちゃん譲りの喧嘩の才能があったらしい。  そうして虐めは無くなった。  けど友達もいなくなった。  みんな私を怖がった。  高校の入学式を迎えようとしていたとき、突然婆ちゃんが死んだ。  心臓発作だった。  熊谷の自宅の縁側で倒れているのを近所の人が発見した。  私が立ち直ったのを見て、気が抜けたせいかもしれない。  自宅での葬式だったけど、千人以上の人達が来てくれた。  庭には桜の花が綺麗に咲いていた。  婆ちゃんは桜を見ながら天国に行ったんだと思う。  私は一週間泣き続けた。   そして長かった髪を耳が見えるくらいばっさりいった。  婆ちゃんの教えを守り抜く誓いとして……。
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