玉勝間

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 シャンプーを洗い流して風呂場を出る。  脱衣所の窓から見える太陽がまぶしかった。  よし、あんな夢は忘れてしまおう。  全部の夢が予知ってわけじゃない。  ジャージに着替え、タオルで頭を拭きながら居間に戻った。  居間のテレビではアイドルぶった女子アナがニュースを伝えてた。 「――先ほど入ってきたニュースです。今朝五時頃、府中市是政にある多摩川競艇場近くの河川敷で男性の死体が発見されました。発見者はジョギングの途中で遺体を見つけ、すぐさま通報したもようです。遺体は首を切られ、口を無理やり開かれた状態で発見されました……」  私はテレビの前で固まった。 「――警察の発表によりますと死因は首からの失血死で、身元などの詳細は不明ですが、被害者は近辺で生活していたホームレスではないかと見られています。警察は現場の不自然な状況から殺人の可能性を視野にいれて捜査を開始する模様です。次のニュースです……」   「是政かぁ、怖いなぁ。意外と近いぞ」  親父が首を振りながらぼやく。  ――夢と似てる?  私の思考は停止していた。  首から血を流すホームレスの姿がフラッシュバックする。  予知夢は現実に起こることのヒントの場合が多いんだけど。  今朝見たのは……。  本当にあったこと……?    親父が壁掛け時計を見上げ立ち上がった。  七時半を過ぎてる。 「さてと、じゃあパパは、おちごとに行くでちゅよ」  人が真面目に考えてるときに、この親父は……。 「早く行けよ、甲州街道、混むだろ」 「亜紗ちゃん、パパに、いってらっちゃいは?」  親父は両拳を口に当てて、目を輝かせる。  私は歯を食いしばる。 「早く行けよ……。蹴り入れんぞ……」 「亜紗ちゃん、怖ぁい!」  親父は逃げるように出て行った。  昔は親父ギャグなど縁の無い、堅物の父だった。  私が虐められたときに、親父もかなり悩んだらしい。  悩んだ末の姿があれだ。  良いのか悪いのか。  でも昔よりはましかな。  真面目だけど、どこか冷たく感じた父よりは……。    制服に着替えてキッチンに行くと鯵の焼ける香ばしい匂いがした。  ご飯を二杯平らげ、お茶を一気飲みして席を立つ。 「あんた、中間テスト返ってくるんでしょ。ちゃんと見せなさいよ」  おふくろが後ろから言い立てる。   「へいへい」     一応返事はしとく。
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