06_現実と夢の中で

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 優しい兄ではどこかで手を抜くかもしれない。本気で限界を超えなければ強くはなれない。そう思って兄の同僚に師となってもらい、文字通り死ぬ気で鍛えられた。生死の境をさ迷ったのは1度や2度じゃない。  師匠以外の稽古にも片っ端から参加し、それなりに強くなれたと思う。あれだけやって弱いままじゃ困るんだ。  腕は磨けた。  変わったのは俺だけだった。  人の位置というのは自分自身では決められない。客観的な視点で他者によって定められるのがほとんどだ。  何より第一印象は覆しづらい。一度下位に置かれた者が強くなる姿は時に不愉快に映る。  同年代のやつらは俺を自らより下という『正しい位置』から抜け出すことを許さなかった。  そして中学2年の初夏。宿り身を総動員するダルギスとの境界線が勃発した。  そこで兄が命を落とし、唯一とも言える友も失った。  あれほど泣いた日々は他にない。一生分の涙を流しきった。  五十鈴が家を出たのもその頃だ。  気を使ったのか、情けないところを見たくなかったのか、いい加減うざくなったのか。理由を聞き出す勇気は俺にはない。  それ以降はかなり荒れた。裏で闇の深い繋がりがあるグループは力で押さえつけた。任務とはいえども敵を増やしたのはこの頃だ。  裏の不良界隈でビギナーズラックという目も当てられ無い程にダサい名前で呼ばれ始めたのも同時期だった。
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