05_異次元の戦い

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 「くそっ、そういうことかよ!」  事態を把握して、俺は。  伝わるべき衝撃が体に伝わらない。  勢いよく蹴った足は直ぐにコンクリートに接触する。  場所はさっきと変わらない。建物の間の小さな細道だ。  道路に出ても空間を構成している配置などには一切変化がない。  ただし、同じ世界ではないことは一目瞭然だった。  決定的に世界の色合いが違っている。光と色を失い、古い写真と同じく全てがモノクロに塗り替えられている。  薄暮のような世界には人の姿がない。さらに言えば動く物が何一つ存在していない。  俺たちが『進む可能性があった』が『選択されず廃棄された』次元。  誰もいない『過放次元』と呼ばれている世界で心臓の音がやたらとうるさく響いた。  水原はここにいるのか?だとしたらそう遠くへは行けないはず……。  探し出す前に心配は杞憂に終った。  電柱に寄りかかり、座り込んだ制服姿が目の前にいたからだ。  「おい!大丈夫か?」  肩に触れると水原の体は力なく傾いた。幸いなことに呼吸は静かに行われている。  「息はあるな。いったい何がどうなって」  「あー、そこの君。彼女は寝てるんだからサ。あまり騒がしくしてもらっては困るな」  誰もいないはずの世界で男の声で言葉が遮られる。
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