00_プロローグ①3年前の夏

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 駆け付けた少年の腕の中で、兄はすでに事切れていた。  「ごめん……兄さん。間に合わなかった……」  戦地のどこかで、少年の慟哭が響いた。  後から少年は知らされた。  少年が所属していた隊は全滅。  近くの陣営も軒並み潰され、少年だけが生き残った。  この戦いで少年は名誉ある称号を手に入れた。  しかし、釣り合いが取れているとは微塵も思えなかった。  兄が死に。  唯一の友を亡くし。  優しかった隊長ももういない。  組織での居場所もなく。  家族からは逃げ。  恩人の慰めを拒み。  師の激昂を払い除けた。  いくつか歳を重ねた後から、少しずつ気付き始める。  そのほとんどがまだ子供だった、自ら招いた事であるということを。  それでも選んだ行動の修正は効かず。  悔やんだ過去の時間は戻せず。  少年の両手からは多くの希望が溢れ落ちていった。
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