01_プロローグ② とある少年の独白

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 押し付けものの受け皿は用意されることなく強制的に選ばれた。  それが俺達。通称『宿(やど)()』。  生まれた時から魔力を宿し、死とともに解放される数奇な運命がここにはある。  宿り身の存在は表舞台には認知されていない。何も知らない人の群れに紛れ、異能を駆使して事態の根源を絶つ。  何の為に?  理由なんてない。生まれた時から宿り身は避けられない宿命を背負わされている。  誰の為に?  それも分からない。俺が守りたいと思う人は俺の手を必要としないし、力無き者の為に命を賭けるほど俺は出来た人間じゃない。  偉そうに述べているけど、俺はもう前線から遠退きつつある。後悔はあまりしていない。  近頃は波風が立たない、無風の日々を送っている。  そんな体たらくが災いしたのだろうか。  突如として新風が巻き起こることを、俺は知らず、水面下で進行する陰謀の存在にさえ、気付くことができなかった。
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