二人の下校風景

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「杢圖、一緒に帰ろう」 「……ああ」  放課後、我が中学の校門近く。  クラスメイトで我からしたら変人の栂がそう言ってきた。  杢圖はもくず、栂はつか。  改めると、変とまでは言わなくても珍しい名前ではある。 「変とはなんだ変とは」 「栂、お前勝手に読んだな」  我(われ)が栂を変人と思う所以の一つ、こいつは他人の心を読める。 「プライバシーの侵害だ。訴えるぞ」 「残念ながら現行法は超能力に対応出来ない」 「それなら新しい権利が必要だな。心を読まれない権利」 「まあ、いいんじゃないか?」 「そうだろ? 我はきっと将来総理大臣になってその権利を定めるんだ。 ヒーローだな。超能力者から国民を守った者として教科書に載る。 そして未来永劫、我は語り継がれるであろう」 「まあ、いいんじゃないか?」  さっきと同じ反応な気がする。 「ああその通りだ。よくわかったな」 「また読んだな」  ああ、そうかツンデレか。  我のことが好きで堪らないから照れ隠しと。  いや、残念だ。我は女子の方が好きなんだ。 「そんな訳ないだろう。妄想も度が過ぎると迷惑だ」 「迷惑なんて思うのは心を読むやつくらいだろ」  そう言ってから、気配を感じ後ろを向くと少女が一人。後輩か。  彼女は我達を上目遣いで見ている。  ……そうか、わかったぞ。告白しに来たのか。そうだろう。  いや、察しが悪くて申し訳ない。女子から切り出させるのは失礼だな。 「校門の近くで先輩二人がいて通り辛いってさ」  栂がそう言うと、少女はビクッとした。  そして恐る恐る栂を見ている。 「ああ、そうだったのか。悪いな。じゃあ、帰るか」 「そうしようか」  校門とは人通りの多い場所だ。  道路もかくの如し。  つまり、さっきの我たちのような障害物があると邪魔だ。 「そうだね。これは少し困った。いやね、遠回りしたらいいとは思うんだけどさ」 「その通りだな。ただ、ここがどうして通行止めになっているのか」  目の前には通行止めと書かれた紙が提げられた棒。  赤と白のコントラストを浮かべたコーンに棒の先の輪がはめられている。  簡易的な踏切に見える。棒は上がらないが。  通行止めの理由は書いていない。イラつくな。 「だね。工事なりなんなり理由は書いてもらわないと」 「全くだ」  イラつくというのには栂も同意か。
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