二人の下校風景

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 せめてイラつきは解消したい。  それなら立ち入り禁止の理由を考えればいいわけだ。 「いや、そこまで思うなら中に入った方がいいと思うんだけど」 「栂は馬鹿だな。立ち入り禁止って書いてあるんだから入ったら駄目だろ」 「うん、そうか。わかった。あとは最初の七文字の文は心の中で言うべきだと思う」 「どうせ心を読んだらわかるだろ」 「まあね」  栂の悪びれない顔から目を背け、我は考える。  立ち入り禁止。つまり立ち入ってはいけない。  立ち入ってはいけないのはどうしてか。  隠したいから。危険だから。我が考えるに主にこの二つ。  そうすると……。 「わかったぞ!」 「外れる気しかしないのは何故だろう」 「俺の考えも知らないくせに」 「今の十六文字は心を読んだ上での発言」 「その時々文の文字数を言う癖はなんなんだ」 「暇つぶし」 「……まあいい。我の考えを聞いとけ」 「いや、心の中で考えてくれればいいよ。読むから」 「仕方ない」  じゃあまず、何故ここが立ち入り禁止なのか。  それはこの先に宇宙人がいるからだ。  近頃、隕石と思われる「なにか」がこの近くに落下したらしい。朝ニュースでやってた。  つまりこの先には我が思うに隕石と思われてしまった未確認飛行物体とそれに乗っていた宇宙人がいる。  その存在を隠すために、宇宙ステーションMASAの関係者がこの先を立ち入り禁止にした。  さらに、ここを立ち入り禁止にすると我とお前はここを通れない。  それによって我たちはイラつく。  イラつくと集中力が落ちる。  そうすると、今度の期末テストの点数が悪くなる。比例して我の成績は悪くなる。  成績が悪いと良い高校に入学出来ない。  高学歴の道は閉ざされ、我が総理大臣になることは叶わない。  総理大臣になれないということは、我が新しい権利を作れない。  心を読まれない権利をだ。  さあ、これでもうわかっただろ?  
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