二人の下校風景

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「って、そんなわけないだろ」 「馬鹿な! 我の推理は完璧!」 「いや、今のは推理じゃなくて妄想って言うんだよ。杢圖がいつもやってることだね」  冷静に栂は返してきた。  馬鹿な。そんなわけない。 「それなら見にいくぞ。この先を」 「さっきは入ったら駄目とか言ってたのにね」 「過去は振り返らない」 「流石、現実を見ない妄想少年だ」 「うるさいぞ、プライバシー侵害の超能力男」 「少年にしとこうよ」  我は無視して端のコーンに近づく。  そもそも立ち入り禁止ならもっとしっかりと封鎖するべきだ。 「それは同意だね」 「だろ?」  コーンを動かして中に入る。  ここは通常の道路で、一本道だが行き止まりはない。  一体どこまでが立ち入り禁止なのか。  少し冒険心をくすぐられながら進むと、奥になにかが見えた。  音も聞こえる。  いや、音じゃない? ……これは声か。  隣の栂を見ると、少し不思議そうな顔をしている。 「どうした?」 「いや、工事中ってオチだと思ったんだけど外れたみたいだから」 「まあ、そうだな」  工事現場にあるような車は見当たらない。工事らしい音もない。  なおも近づくと、姿はまだはっきりしないが声の方がはっきりし始めた。 「キェアェェェァァ」  ……なんだこれは。 「すごい声だね」 「ああ、ダチョウと鶏とガチョウとアヒルとペリカンの声を足して犬と猫で割ったみたいな声だ」 「そうかな? 虎とライオンと狼とゴリラと象を掛けてアルパカで割ったように思えるけど」 「随分と厳ついな」 「大丈夫、アルパカで中和された」  とりあえず表現し難い奇声のする方へ向かって歩いて行く。  やがて見えた。衝撃的な光景が。  一生に一度あるかないかの。 「これは立ち入り禁止だね。うん、正しい」  そう栂が言う光景。
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