二人の下校風景

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 全裸で全身金色の人型、男性のように見える姿をした生物が道の真ん中でブレイクダンスをしている……。 「……宇宙人か」 「いやいや、そうだとしたら僕はいろいろ幻滅しそうなんだけど」 「失礼だろ宇宙人に」 「杢圖がね」  まあ、なんだ。このなんとも言えないような光景は。  中学生には刺激が強い。  流石の我もこれは。 「あ、ブレイクダンス終わった」  見ると栂の言う通りだ。  そして、立ち上がったか……れ?は頭を抑えてる。  なんとなく、外国の映画でやらかしてしまった人がよくしているイメージのある光景だ。  ブレイクダンス痛かったんだろうな。  そして彼は我たちを見た。目が合う。  今だ。今しかない。 「あなたは人間ですかーーー!?」  近寄りたくないから我たちとあれの距離は遠い。そのための大きな声の質問。  まず、アレが人間なのかを確認しなければなるまい。  我の質問に対し彼は、金色の彼は、笑顔で返した。 「……『そうだよ』って心の中で言ってる」  栂のその言葉のあと、突如金色の彼は身を翻した。  そして歩く。  夕日が彼の体を照らす。  シチュエーションとしてはドラマみたいでカッコいい。  ただ……金色だ。 「……事実は小説よりも奇なりって言葉があるけど……この場合は事実は妄想よりも奇なりかな?」 「我のは妄想じゃない。……推理よりも奇なりだ」  なんというか、駄目だ。声に覇気が出ない。  破壊力が……強過ぎる。  この不思議な空間で、我たちは暫く動くことが出来なかった。  動けるようになった頃には陽は沈んでいた。  それでも頭の中に衝撃は残り、目に光景は焼き付いている。  いろいろなことが頭の中を巡る。  今のは金縛りだったんじゃ? つまりあれはやはり宇宙人で、地球を侵略しに来たんじゃないかと。  全て謎だが、これだけはわかった。 「栂」 「うん、心を読んだからわかる」 「そうか。……通行止めは……」 「通ったら駄目……だね」
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