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「状況はどうなっている?」
何もないだだっ広い空間。
その中央で、自身の体長を上回る椅子――王の玉座と表現すべきだろうか、に座る一人の男性。
闇夜に紛れて発せられた太い声は、目の前に背筋を伸ばして立つ若い女性を一瞥させた。
「滝沢謙吾が負けました」
先刻の男性とは対照的な、透き通った美声。
見た目は小柄で、女性というよりはまだ少女のあどけなさが少し残っている。
背中まで伸びた金色の髪に、淡いライトグリーンの瞳。
誰がどう見ても、日本人でないことは確かだった。
「他には?」
ただ、女性の報告に眉の一つも動かさないのはさすがと言うべきか。
――それとも……。
「いえ、ダーツ様が気になさることは特には」
「そうか、お前はもう戻れ。中路と達海だけでは大変だろ」
「……はい」
返答にかかった時間は、ほんの一秒にも満たない。
だがこの男――ダーツはその些細な違和感に気づく。
「俺に何か後ろめたいことでもあるのか――レイ?」
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