1章 戸惑いと旅立ち

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 突然の跳躍。  その予期しない動きに俺は馬鹿みたいに口を開けてしまう。  それどころか、俺の頭上を覆うように落下してくるワンプになすすべもなく背中から押し倒される。  ゆっくりと流れ出る粘液。その光景を目の当たりにすると、御者の恐怖感が理解できた。だが、そんな感傷に浸ってる暇はねえ!  俺は直ぐに体を捻り、右方向へと転がりながらその場を離れる。  地面にだらりと粘液が垂れた。アレに触れていたら苦痛に顔を歪めていただろう。まさに間一髪ってやつだ。  それにしても師匠の教えは的確だな。つまり、俺の観察力が足りないってことか。  再び距離を取ってワンプの動向を伺う。  こいつは脚を切った俺に対して集中的に襲うことはなく、身近な敵に攻撃を仕掛けるようだ。お陰で俺は追撃を食らわずに済んでいるが、自分以外に積極的に攻めるやつがいないのが長期戦を助長している。 『踏み込むなら懷深く踏み込め』  師匠の教えが脳裏に浮かぶ。  さっきの要領で近付けば確実に脚を削ぐことはできるが、浅く踏み込むことで警戒心を与えてしまうだろう。 「ハリエット、なにか敵の注意を引くようなものはないか?」  俺の呼び掛けにハリエットはすぐにウィンクをしてみせ、腰のポーチをごそごそと漁る。もしや、爆弾? それは不味いだろ。  ハリエットは折り畳み式の短刀を数本取り出し、一本、また一本とワンプの正面へ投げる。  命中精度は悪い。本当に気を引くだけだ。  その甲斐もあってワンプはのこのことハリエットに近づく。真後ろにいる俺のことは完全に頭にないらしい。そもそもこんな化け物に知能があるのか甚だ疑問だ。  剣を構え、じりじりと近づく。あまり慎重に行けばハリエットが襲われる。それだけは避けねば。  後ろの足で地面を蹴り、ワンプの背後へ一息に踏み込む。ちょうど体を断裂するように剣を掬い上げる。   
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