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だというのに、リンは目を輝かせて振り子に夢中だ。俺からすればそんな安物なんてすぐ壊れてしまうだろうとみている。糸と石さえあれば作れる代物だからな。
とにかく、山に登る準備は整ったようだ。リンは防寒具を買わなかったみたいだが大丈夫だろうか。
ちなみに俺は獣の革をなめして作った革のマントだ。お手製なところがポイントだ。
ゼネラルロッツの町を背に、緩やかな山道を突き進む。人里が近いせいか、踏み慣らされた道は茶色い土が剥き出しだった。
リンは振り子を揺らしながら辺りをキョロキョロと見渡していた。夢中で振り子の動きを見つめているが、入口に宝は埋まってないと俺は思った。
ゼネラルロッツを出発して数日。
時々ウルフを発見しては退治し、皮を剥いでは袋に詰める。特に問題は起きず、並の冒険者ならピクニック気分だろう。ハリエットも軽快な動きで上へ上へ登っていく。
景色は少しずつ変化する。土の道が凸凹した岩肌に、木々は広葉樹から針葉樹へ。おまけに空気は冷たくなり、口から白い靄が漂い始める。
「雪ね」
ちらつき始めた雪に目を奪われるものの、街道で出会ったアイスドレイクが巻き起こした吹雪はこんなもんじゃないと思い出す。リンはあのとき立ち向かおうとしたが、俺にその覚悟はあるのか。
ふいに、目の前が真っ白になった。顔には冷たい感覚と何者かに殴られたような痛みがあった。
「スノーマンよ!」
ハリエットの呼び掛けにリンがいち早く対応する。リンは杖と共に右腕を突き出し、炎の玉を召還する。
雪に対して炎。それは効果が抜群でスノーマンと呼ばれた雪だるまの傍らを通り過ぎるだけでの丸い体を一瞬にして溶かした。
直ぐにハリエットが走り寄り、スノーマンの居た場所を入念に探す。
その瞳はとある場所を見つめ、お目当ての物を発見して摘まみあげた。
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