卒業裏文集

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「譲二は眼鏡を外して髪上げたらこんなにイイ男なのにね」 彼の眼鏡をそっと手に取り、前髪をかき上げる。 クラスの誰も彼の魅力に気づいていないなんて、本当にもったいないとしか言いようがない。もちろん見事に存在感を消している譲二がすごいのだけど。 クラスの女子が本当の彼を知ったら、きっと大変だったことだろう。それこそ「特定の相手」扱いは間違いない。 だから、みんなが気づいていなくて自分にとっては好都合だった。 私だって最初は全然知らなかった。知ったのは本当に偶然。きっかけはほんの些細なこと。 2年生の冬、休日にカフェで偶然出会った。ただそれだけ。 彼の私服姿を一目見て、学校での彼は仮の姿でしかないことがすぐに分かってしまった。 なぜなら私と同じだから。だから、彼も同じく私にすぐに気づいたのだと思う。
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