卒業裏文集

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いつだってぬかりのない譲二。 彼がイタズラでも考えているかのようにニヤリと笑うので、私はその横顔にクラクラする。 「えーと、一番の思い出は……。」 私は少し照れていることをごまかすために彼の書いた回答を読み上げる。そんな私を見て譲二はまたクスクスと笑った。 そして、再び流れるように進むペン。 それを見ていて、あることを疑問に思った。 「5問目は? 模範解答だったら誰を書くの?」 「それ聞いちゃう? それなら逆に聞くけど、愛梨は誰を書いて欲しいの?」 試すようにこちらを見つめている。 誰を書いて欲しいって、そんなの決まってる。 だけど、ガリ勉メガネとしての模範解答なら、ノーコメントが正解であるようにも思う。少なくともクラスの地味女を恋人にしたいと書くのは、模範解答だとは思えない。 そもそも今までうまく隠してきたのに、最後の最後でバラしてしまっては台無しになるかもしれない。 でも、もう直接会うこともない子がほとんどだし。
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