卒業裏文集

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書いて欲しい気持ちと書いてはいけないと思う気持ち。 どうしたものか……。 「誰を書いて欲しい?」 譲二は私が悩んでいることを承知で返事を催促してくる。 からかってるだけ? それとも、譲二はそれでもいいって思ってるってこと? だったら我慢したくない……。 「……書いてよ。私って。小野愛梨を恋人にしたいってちゃんと書いて」 悩んだ末の選択と言えば聞こえはいいけど。結局女の見栄というものがこっちの私にもあったらしい。 最後だからこそやっぱりちゃんと言ってほしい。 所詮みんなの反応は「へー、あのガリ勉と地味子が両想いだったんだ」って程度だろうと思うけど。だけどそれでも構わない。 私の返事を聞いた譲二は少し驚いた顔をして、プリントを私から隠すようにして何も言わず再びペンを走らせた。 少しして彼は私の前にプリントを広げた。 「これで満足?」
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