一ノ章 天狐・魔淫

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「じゃあ何? 今まで肩こりやら、頭痛やら、腹痛やら、あっちこっち痛かったのって、道長が言うように霊障のせいだって言うの!」  美桜は、むーっと道長を睨む。  内心、霊障じゃないって言ってくれー、と淡い期待を抱きながら。 「そうだよ、霊障が原因」  けろりとした顔で、道長は美桜の淡い期待をばっさり切り捨てる。  ぞわあっと全身総毛立つと同時に、美桜のこめかみにはピキッと青筋が浮かび上がった。 「即答ッ!? ぜーったい違うッ! ユーレーなんていない!」   「いるよ、ほら、そこにも……」  そう言って道長は、美桜の背後にある電柱を指差す。 「――――ひゃああうッ」  目にも留まらぬ素早さで、美桜はちゃっかり道長の背後に隠れた。  その手はしっかりと道長の制服を掴んで離さない。 「ほら、信じてるじゃない」  怯える美桜に、にやりと満足気に笑う道長。  美桜は、心臓が口から半分ほど出たじゃないかと、ジト目・涙目で抗議する。  実は道長、霊が見える人種なのだ。  見えるだけでなく、話したり、祓ったりもできる。  これは恐らく生まれ育った環境にも影響されてるんじゃないかなと美桜は思う。  なぜなら道長の家は、歴史ある由緒正しい神社で、彼の父親は宮司さんだから。  美桜は、ユーレー関係一切苦手でお断りって言ってるのに、霊媒体質であるが故に、道長は敢えて幽霊ネタで美桜を怖がらすのだ。  こういう所が『道長って性格悪ぅ~い』と言われる所以だ。  主に言っているのは美桜だけだが。
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