一ノ章 天狐・魔淫

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「で、でもさ、今は何もあたしの傍にはいてないんでしょ? じゃあ心配ないんじゃないの?」  びくびくと、心配ないって言ってーっと、またも淡い期待を抱く美桜だが、 「うん、そうだね。今のところは、ね」  含むようなその台詞に、美桜はまたかーと、がっくりしつつ道長に文句を言ってやる。 「ちょっと待って。なにその意味深な言い方。あたしはオカルト苦手って知ってるくせに、いつも脅かすようなことばかり言うよね。実は道長、あたしのこと嫌いでしょ」  何度も言うが、美桜はオカルト系がキライだ。  どれくらいキライかと言うと、目に見えない霊なんて十万億土の旅に出て二度と娑婆の土を踏んで欲しくないと思う。  もしくは、千の風にでもなってニライカナイにでも仙界にでも極楽浄土にでも吹っ飛んでくれよと切に願う。  間違っても、波に身を任せながらふよふよと海を漂うクラゲのように、大きな空を吹きわたらないで欲しいものだ。  どうしても現世に残りたいとダダをこねるのなら、閻魔大王や仏陀大王や四天王などとタイマンはって勝つくらいの気概をみせて欲しい。  それにちょっと気に入った相手がいたら、安易に取り憑いたり苦しめたり金縛ったりするのはやめて欲しい。  とにかく自分の目の前に、その姿を欠片もみせて欲しくないと美桜は思うのだ。  身内の霊に対しても桃源郷から出て現世・お散歩ツアーなどに参加して欲しくないとさえ思うのに。  それくらい美桜はオカルト系が大嫌いで苦手である。  もう、生理的にイヤ。全否定である。
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