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結局、委員会が終わったのは夕方を過ぎ、辺りが真っ暗になってからだった。
美桜は自宅までの道のりを、何故か当たり前のように隣を歩く魔淫を見遣る。
「……ねえ、タナカセンセイ? どういうことか、説明してもらおうじゃない」
先ほどよりは冷静さを取り戻した美桜は、じっとりと魔淫を睨み説明を求める。
そんな美桜を、魔淫は苦笑を浮かべながら答えた。
「すいません。貴方の傍にいるために人間に化けました。学校の関係者に、私がここにいても不審がられないよう記憶操作の術をかけ、私を一教師として認識させたのです」
なんて、普通ありえないような回答が返ってくる。
そう、ありえないことだ。でも――――。
皆の記憶には存在していて、自分の記憶には存在しない教師――魔淫。
記憶操作の術。そんなファンタジーな発想、否定したいがそれも出来ない。
なぜなら昨日までそこにいなかった存在を、当たり前のように存在していたと言う他の生徒たちの言動を、美桜は目の当たりにしてしまったのだから。
集団催眠、のようなものだろうか?
それに……――――。
「人間に化ける……」
それはつまり、魔淫は人間以外の知的生命体という意味なのか。
美桜の頭に、宇宙人、という単語が浮かぶ。
向けられる奇異の目に、魔淫は少したじろぎながらも続けた。
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