438人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
「……は、はい。気配も人間のものです。天狐の気配自体、今はないです」
「……てんこ」
どうやら宇宙人ではないらしい。
今朝もそんなこといっていたけれども……。
そもそも『てんこ』ってナニ?
某アニメキャラの可愛い女の子の姿が頭に浮かぶ。いや、アレはすでに性別と設定自体が違うと改め直し、再びうんうんと考えをめぐらすのだが。
まるで、出口のない迷宮にはまり込んでしまったようだった。
なんとかオカルト的な発想から抜け出したい美桜は、現実的な答えを求めて脳みそフル回転状態だ。
懊悩を繰り返すうちに、いつの間にか自宅へと到着した美桜は、そのまま自分と一緒に家へ入ってこようとする魔淫にギョッとした。
「な、なんで、入ってくるのかな!?」
「え? だって、私は貴方の眷属ですから。生活を共にするのは当たり前でしょ?」
当たり前でしょ、とか言われても、それは美桜の常識では全く当たり前ではない、ありえないことで。
「あっ、ちょちょ、ちょっとちょっと!!」
勝手知ったる、といった風に玄関から奥の間へとずんずん入ってゆく魔淫の後を追うべく、美桜も慌てて靴を脱ぎ捨てた。
「あ、私のことはお気になさらず」
にっこり笑顔で言いながら、魔淫はリビングにある美桜がお気に入りのカウチに勝手に腰掛ける。かたやその堂々とした態度に、美桜はこめかみに血管が浮いてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!