一ノ章 天狐・魔淫

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「気になるわ!! あたしはひとり暮らしな上、魔淫みたいな二メートル近い大男がいたら邪魔なのッ、出てって!」  美桜は怒りに任せ大声でそう言い放つと、魔淫は、 「大きいのがお嫌ですか? では」  ぽうん、と魔淫の身体が白煙に包まれた。 「ぎゃっ、な、なに!?」  いきなりの噴煙に思わず一歩退いた美桜だったが、――その後、さらに驚くことになる。  もうもうとした白い煙が去り、魔淫がいた場所には――――なんと子猫サイズの小さな銀狐が、ちょこんと鎮座していたのだ。 『これなら、小さくていいでしょ?』  チビ狐は魔淫の声でそう、にっこりと答えたのだ。 「……ひぎゃあああっ、ウッソおおおお」 (魔淫が狐に変わっちゃったッ!! やっぱりやっぱりオカルトだったんだッ!!)  悲鳴を上げ、美桜は口をあんぐり開けたまま、ぺたんと床にしりもちをついてしまう。  その様子を見た子狐魔淫はフフ、と笑った。 『私は天狐、化け狐です。もともとは九尾の狐でしたが、尻尾が取れて、今は天狐となりました』 「――――し、尻尾が取れる?」  美桜の混乱した脳裏に、なにやら痛そうな想像が広がってしまう。  苦いものを口に入れたような複雑な表情を浮かべる美桜を見て、魔淫は苦笑しながら続けた。
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