一ノ章 天狐・魔淫

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(ああ、か、可愛い、可愛すぎる……あ、今、手ぇ、舐めたッ、なんか手で顔クイクイしてる! ……はぅあああっ)  何故か美桜の手がわきわきと動き、その目は獲物を狙う鷹のように子狐魔淫から一瞬たりとも離れない。  美桜はその動きをジッと目で追っているのだ。  触ってみたくて仕方がない。  だがしかし。可愛い姿をしていても、アレはあの長身な美青年・魔淫――。  美桜はふと視線を落とした。  化け狐――妖狐、と言っていた。  事実、目の前で変身する姿も見てしまった。  これは空想でも妄想でもなく、現実なのだ。  美桜はもう一度、魔淫に視線を戻す。  触ってみたいけれど、愛らしいけれど、あのキュートな子狐は……魔淫。  美桜の内では激しい葛藤があるようだった。 『この姿なら、一緒に住んでもいいでしょ?』  子狐魔淫は可愛らしく小首をかしげながら、とどめの一発、とばかりに美桜の視覚に訴えた。 「え、え、あ、ちょっと、え」  ふにゃあ、と美桜の顔が一気に緩む。  しかし、まだ頷かない美桜に、魔淫は美桜の膝の上に飛び乗ると、 『ダメ?』  と、蒼色に潤む目を向け、ほわほわとした毛並みを美桜の胸に押し付けた。 「ふああ、かわいー……」  美桜の手が、恐る恐る魔淫に伸びる。  もふっとした柔らかな毛が、美桜の手に触れた。 「!! はああ、も、すっごいカワイーッ」  美桜はとうとう我慢出来ず、ぎゅうと魔淫を抱きしめた。  魔淫は抱きしめられながら、ニタリと笑う。 『一緒に住んでもイイ?』 「……もうもうもうっ!この卑怯モノ~! あたしの弱点利用してッ! ああ、もう、好きにして!」  乱暴に言いながらも、美桜は子狐魔淫の毛皮に顔を埋めてニマニマとヤニ下がってしまっている。
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