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「はわあ、もふもふだあ、もうもう可愛い、可愛いぃっ」
きゃぁあっと身悶える美桜の姿は、すでに十七歳のお年頃な少女のものではなく、はあはあ鼻息荒く電柱の影に隠れる変質者のように危うい電波を発している。
『……よしっ……』
ニヤリとほくそ笑んだ子狐魔淫の低音ボイスな呟きは、――――美桜には届かなかった。
実は、美桜が生まれた時からずっと今日まで、姿を隠し美桜の傍に魔淫はいたのだ。
だから、美桜の弱点である『小動物にめっぽう弱い』ことも知っていた。
他の誰よりも美桜の性格を知り尽くした、魔淫の作戦勝ちである。
その後、いったん元の姿に戻った魔淫は、美桜のために夕食を作ってくれた。
そして、食事が終わった途端、さっそく美桜はリクエストをした。
『もっかい、かわいーのに変身して?』と、魔淫の後を付いて回っておねだり攻撃を開始したのだ。
苦笑いを浮かべながら、魔淫は美桜のリクエストに答えてくれた。
リクエスト通りの魔淫の姿に、美桜は幸せそうな笑みを浮かべる。
子狐魔淫を見つめる美桜の顔はだらしなく笑み崩れ、唇はへにゃあと半月形に緩みっぱなし。
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