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子狐に変化した魔淫は小さく溜息をつく。
どうやら、しばらくこの格好でいなければならない事実に、子狐魔淫は少し自己嫌悪に陥っているらしい。
しかも小さなお皿に注がれたミルク。がっくり項垂れながら、子狐魔淫はそのミルクをリクエストどおりに舐めてくれた。
瞬間、美桜の顔がぱああっと輝く。
『……美桜様』
「なあに? まいんっ」
しんぼうたまらんとばかりに、ミルクを口にべったりつけた子狐魔淫を抱き上げると、美桜は視線をあわせてみた。
子狐魔淫の瞳に映る自分の顔は、期待にキラキラと輝き、黒目がちな大きな瞳はうるうると潤んでいる。
じいっと見つめていた次の瞬間、美桜はミルクのついた子狐魔淫の顔に、ガブッとかぶりついたのだ。
『ぎゃっ!?』
予測していなかったのだろう。美桜のその突飛な行動に、子狐魔淫の四本の尻尾がボワッと膨らみ、足はビンッと硬直する。
『な、なな、なんですかっ』
心なしか子狐魔淫の声が上ずっている。
「うふふっ、可愛い可愛いっ、子猫ちゃんみたいでほんとカッワイイな~」
そう言って、美桜はまたギュウッと抱きしめる。
抱きしめられた子狐魔淫はくすりと笑った。
「んー、何笑ってんの?」
美桜は、にまにま笑う子狐魔淫を覗き込んだ。
『ふふ、一緒だなって思ったんです』
「何が?」
『晴明様も小さな動物がお好きで、よくお屋敷に連れ帰っては、奥様に怒られてましたから』
「へー、そうなんだ」
『姿かたちは変わってしまっても、そんなところは同じなんですね……』
聞こえないほど小さな声で子狐魔淫は囁く。
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