一ノ章 天狐・魔淫

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 子狐に変化した魔淫は小さく溜息をつく。  どうやら、しばらくこの格好でいなければならない事実に、子狐魔淫は少し自己嫌悪に陥っているらしい。  しかも小さなお皿に注がれたミルク。がっくり項垂れながら、子狐魔淫はそのミルクをリクエストどおりに舐めてくれた。  瞬間、美桜の顔がぱああっと輝く。 『……美桜様』 「なあに? まいんっ」  しんぼうたまらんとばかりに、ミルクを口にべったりつけた子狐魔淫を抱き上げると、美桜は視線をあわせてみた。  子狐魔淫の瞳に映る自分の顔は、期待にキラキラと輝き、黒目がちな大きな瞳はうるうると潤んでいる。  じいっと見つめていた次の瞬間、美桜はミルクのついた子狐魔淫の顔に、ガブッとかぶりついたのだ。 『ぎゃっ!?』  予測していなかったのだろう。美桜のその突飛な行動に、子狐魔淫の四本の尻尾がボワッと膨らみ、足はビンッと硬直する。 『な、なな、なんですかっ』  心なしか子狐魔淫の声が上ずっている。 「うふふっ、可愛い可愛いっ、子猫ちゃんみたいでほんとカッワイイな~」  そう言って、美桜はまたギュウッと抱きしめる。  抱きしめられた子狐魔淫はくすりと笑った。 「んー、何笑ってんの?」  美桜は、にまにま笑う子狐魔淫を覗き込んだ。 『ふふ、一緒だなって思ったんです』 「何が?」 『晴明様も小さな動物がお好きで、よくお屋敷に連れ帰っては、奥様に怒られてましたから』 「へー、そうなんだ」 『姿かたちは変わってしまっても、そんなところは同じなんですね……』  聞こえないほど小さな声で子狐魔淫は囁く。
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