一ノ章 天狐・魔淫

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 その日の晩、子狐魔淫と共にベッドに入った美桜は、永い夢を見ていた。  それは、膨大な量の夢だった。  美桜の魂が刻んだ、その歴史を今、美桜は見ていたのだ。  前世と呼ばれる、果てしない記憶を――――。  それは、まるでテレビドラマを見ているような感覚で、その場面場面、美桜は姿を変えて登場していた。  ある時は少女であったり、ある時は少年であったり。  登場人物の記憶も美桜の中に流れ込み、身体も、その想いも、全てを共有するのだ。  そして美桜の一部として、新たに刻まれてゆく。  一貫して言えるのは、夢の中の登場人物達――美桜の前世は、今の美桜より小さな子供ばかりだった。  成人した大人はいない。  それには理由があった。  夢の中に出てくる前世の美桜は、皆、大人になることなく死んでいたから。  死因は全て、他殺だった。  皆幼くして亡くなっていたので、成人した姿の『自分』は一度も出てこなかったのだ。  誰が、何故、まだ幼い子供だった自分を殺したのか――――。  その理由を知りたかった。  しかし、死の映像だけは、まるで視界にモヤがかかったように見ることが出来なくて。  誰が前世の自分を殺したのか、わからなかった。
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