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その日の晩、子狐魔淫と共にベッドに入った美桜は、永い夢を見ていた。
それは、膨大な量の夢だった。
美桜の魂が刻んだ、その歴史を今、美桜は見ていたのだ。
前世と呼ばれる、果てしない記憶を――――。
それは、まるでテレビドラマを見ているような感覚で、その場面場面、美桜は姿を変えて登場していた。
ある時は少女であったり、ある時は少年であったり。
登場人物の記憶も美桜の中に流れ込み、身体も、その想いも、全てを共有するのだ。
そして美桜の一部として、新たに刻まれてゆく。
一貫して言えるのは、夢の中の登場人物達――美桜の前世は、今の美桜より小さな子供ばかりだった。
成人した大人はいない。
それには理由があった。
夢の中に出てくる前世の美桜は、皆、大人になることなく死んでいたから。
死因は全て、他殺だった。
皆幼くして亡くなっていたので、成人した姿の『自分』は一度も出てこなかったのだ。
誰が、何故、まだ幼い子供だった自分を殺したのか――――。
その理由を知りたかった。
しかし、死の映像だけは、まるで視界にモヤがかかったように見ることが出来なくて。
誰が前世の自分を殺したのか、わからなかった。
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