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『晴明さまぁ』
自分を呼ぶ、懐かしい声。
あれは誰だろう。まだ小さな子。
ああ、そうだ、母から託された。
母である白狐、葛葉明神から。目の前の小さなあの子を。
その子の姿は、銀色のさらさらの髪が肩につくほどの長さで、頭には獣のような銀の耳が生えている。
尻には尻尾が九本ついていた。
その小さくて可愛らしい尻尾が、嬉しそうにふりふりと揺れる。
『晴明さまぁ』
子供特有の甲高い声。
大きな青い瞳の可愛らしい子。
美桜はその子に声をかけた。
『おいで、まいん』
嬉しそうに飛びついてきたその子を、大きな大人の――自分の手が抱きしめた。
『今日は一日、何をしていたんだい?』
自分は笑っていた。
胸がいっぱいだった。
その子が、可愛くて、愛しくて。
自分を見て嬉しそうに微笑むその姿が、切なくなるほど――――愛おしい。
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