一ノ章 天狐・魔淫

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『晴明さまぁ』  自分を呼ぶ、懐かしい声。  あれは誰だろう。まだ小さな子。  ああ、そうだ、母から託された。  母である白狐、葛葉明神から。目の前の小さなあの子を。  その子の姿は、銀色のさらさらの髪が肩につくほどの長さで、頭には獣のような銀の耳が生えている。  尻には尻尾が九本ついていた。  その小さくて可愛らしい尻尾が、嬉しそうにふりふりと揺れる。 『晴明さまぁ』  子供特有の甲高い声。  大きな青い瞳の可愛らしい子。  美桜はその子に声をかけた。 『おいで、まいん』  嬉しそうに飛びついてきたその子を、大きな大人の――自分の手が抱きしめた。 『今日は一日、何をしていたんだい?』  自分は笑っていた。  胸がいっぱいだった。  その子が、可愛くて、愛しくて。  自分を見て嬉しそうに微笑むその姿が、切なくなるほど――――愛おしい。
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