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紫紺の根で染め上げた渋い葡萄色の着物を着こなし、男結びにした半幅帯は、渋めの着物に反し、黄色みを帯びたの梔色で。
頭には、髪と同じ色味をした狐を連想させるふさふさな先の尖った耳と、尻には四本もの尻尾まで生えている。
しかも、尻尾はワッサワッサと、それぞれ違う方向に動いているのだ。
秋葉辺りで売ってそうな、コスプレマニア御用達・電池式尻尾なのだろうと美桜は予想する。
朝っぱらからコスプレな、ネコ耳?つけた美青年。
二度寝もできないほど、美桜はばっちりと目が覚めた。
「ああ、私の姿が見えているのですね……。美桜様、私は貴方が転生なさるのを、心待ちにしておりました」
そう言うと――ネコ耳美青年は、突然ポロリと涙を零したのだ。
美桜は青年の涙を見て、ギョッと仰け反った。
「な、なに? てんしょーって、ナニ? ってか、どちら様? ・・・なんであたしの名前知ってるの?」
おお、この外人さん流暢な日本語喋ってる! と驚きながらも、美桜は警戒心を解かない。
胡乱げな眼差しで、目の前の残念なコスプレ美青年を見上げた。
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