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次の日曜日――
「来ていただいて、ありがとうございます」
「…いえ」
スッピンの私はつばの広い帽子を深々とかぶり、倉田さんに返事をする。
バカらしいと思ったけれど、来るだけ来てみることにしたのだ。
「どうぞ」
そう薦められて私は倉田さんの向かいの椅子に座る。
ここはキャバクラで同伴をするときによく倉田さんと来ていた喫茶店だ。
5年経った今でも、店の雰囲気は全然変わっていない。
「…」
「…」
何を話せば言いのかわからなかった。
いざ来てみたものの、これから倉田さんに嫌われるのかと思うと胸が苦しくなった。
どうしよう、やっぱり帰りたい。
そう思いながらチラリと倉田さんのほうへと目線をやる。
するとジーっとこちらを見ている倉田さんと目が合った。
思わず、目線をそむける。
冴えない私の顔なんて、そんなに見ないでほしい。
こんな自分じゃ嫌われる。
今、キョウコじゃない自分が申し訳ない。
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