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「どうしてそうやって顔を背けるんですか?」
倉田さんがまっすぐこちらを見ながら私に話しかけてくる。
「…化粧を取って、キョウコじゃない顔で会うのが…なんだか辛くて」
緊張で言葉が詰まる。
キャバクラでの4年間と、会社員になってからの5年間。
合計9年間もキョウコとして生活をしてきた私はもう、カオリとしてだと、ただ話しをすることですら緊張してしまう。
「そんなに辛いんですか?」
「…はい」
言葉を詰まらせながら、正直に答える。
「それがもしかして…今の悩みですか?」
「…はい」
<<いいえ、もう辛くないですよ。悩んでないですよ。
倉田さんの顔を見たら悩みなんて吹き飛びますもの>>
これがキョウコの答えだろう。
しかし、スッピンの私は「辛い」という答えしか出なかった。
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