嬢王たちのその後[カオリ編]

11/18
前へ
/32ページ
次へ
「どうしてそうやって顔を背けるんですか?」 倉田さんがまっすぐこちらを見ながら私に話しかけてくる。 「…化粧を取って、キョウコじゃない顔で会うのが…なんだか辛くて」 緊張で言葉が詰まる。 キャバクラでの4年間と、会社員になってからの5年間。 合計9年間もキョウコとして生活をしてきた私はもう、カオリとしてだと、ただ話しをすることですら緊張してしまう。 「そんなに辛いんですか?」 「…はい」 言葉を詰まらせながら、正直に答える。 「それがもしかして…今の悩みですか?」 「…はい」 <<いいえ、もう辛くないですよ。悩んでないですよ。 倉田さんの顔を見たら悩みなんて吹き飛びますもの>> これがキョウコの答えだろう。 しかし、スッピンの私は「辛い」という答えしか出なかった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加