93人が本棚に入れています
本棚に追加
キャバクラの仕事を始めたばかりで、まだ仕事にも慣れていない頃――
愛さんに
「すんごい気前の良い紳士が来てるよ!」
と言われ、
“美味しい食べ物注文してもらおー”
なんて軽い気持ちで倉田さんの居る席に向かっていた。
そしてそこに座る倉田さんの姿を見て、私はドン引きした記憶がある。
だってこの人は過去、見知らぬ私に
「あ、あの、踏んづけてくれませんか!」
なんて話しかけてきた人だから。
…変態が座っている。
ただただ、冷や汗を流して時が流れるのを待っていたっけ。
「お店に倉田さんが来たときのこと、覚えてますよ。
変態紳士が…きた、と」
「え!?店で初めて会ったとき、僕、そう思われていたんですか…」
ガックリさせてしまったかな?
少し反省する。
「…そう思われていたのは少し嬉しいですが」
と言いながら、倉田さんは顔を赤らめていた。
いや、褒めてないですけど。
久しぶりに会う倉田さんだったが変態は全然変わっていなかった。
「でも、思い出してほしいのはそこじゃないんです。
初めてお店で会った時に僕が言った言葉です」
「…言葉?」
倉田さんが言った事?
私は脳内から古い記憶をまさぐり必死でその時を思い出す。
確か…
最初のコメントを投稿しよう!