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♪ゆーがっっめーぃる♪
梁から垂れ下がるロープに向かって一歩踏み出したとき、テーブルに置いていた携帯がメールの着信を知らせる。
死ぬことを固く決意し、勇気を出して一歩を踏み出したのに、その着信音でプツリと集中力が切れた。
こんなときに一体…。
クルリときびすを返し、机の上にあった携帯を手に取る。
<<FROM:倉田さん>>
人生最後のメール相手は倉田さん、か。
次に倉田さんがメールを送ってくる頃は私はもうこの世にいないだろう。
もう連絡しないでくれ、と返信だけして逝こう。
そう思いながら本文を開く。
<<最近、疲れているという返事が多いですが元気にされてますか?
もし、何か悩んでいることがあれば僕に言ってくださいね。
お役に立てるなら何でもしますから>>
「ふふ、倉田さんらしい」
思わず笑みがこぼれる。
倉田さんはいつもそうだ。
いつもキョウコの事を考えてくれている。
キョウコを好いて、いつもキョウコのために尽くしてくれる。
でも、ごめんね。倉田さん。
私はもうキョウコでいたくないの。
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