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病状が奇跡的に回復したらしい俺は、病室を一般病棟へと移され、そしてしばらくは入院ということで検査を受けることになった。
良かった。戻れたんだ、元の世界に……。
寝ても覚めても変わらぬ平穏な現実世界の日々に、俺は胸を撫で下ろす。
やっと戻る事ができた。
まるで長いこと夢の中に居たみたいだ。
本当に、とても嫌な夢だった。
あれからおっちゃんの声も聞こえてこない。
幻聴だったのだろうか。
どうあれ、もう二度と聞こえてこないでほしい。
毎日見舞いに来る両親は過保護なくらいに俺の体を心配してくるし、気遣ったりしてくる。
その度に俺は元気だと答えなければならなかったし、それを証明する為にオーバーなくらいに明るく振舞い、日常的な生活をいつも通りにやって、御飯も残さず全部食べるようにした。
俺の急激な回復に医者は『奇跡だ』と言って目を丸くしていた。
いや、別に。元々どこが悪かったわけでもないし、俺は元気だと思っている。
それでもわざわざ遠いところから親戚や祖父母も心配して駆けつけてくれたし、学校の先生も見舞いに来てくれた。
そのことでつくづく俺は思い知らされる。
本気で死にかけていたんだな、俺。
目覚める度に病院の中とか、本当に笑えない。
もしかしてあれか? 実はおっちゃんは死神か何かで、言葉巧みに俺をはめて誘導しながら俺の魂をあの世に引きずり込もうとしているんだろうか?
だから目覚める度に病院だったりするのか?
そんでもって俺はあの世界を救う神だのなんだの言われて、最終的には『その為には現実世界で死んでください』って感じのノリで一生あの世界から戻れなくなったりするんだろうか。
――なーんてな。漫画に出てくる主人公じゃあるまいし、漫画の読み過ぎだっつーの。あり得ねーし、ほんと。ははは、ハハ……ハ……。
……。
なんか……本当に笑えない。
そう考えると今更ながら恐怖に体が震えてきた。
絶対そんな軽いノリなんかで死にたくない。
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