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「――って、嫌やろ。あんなゲームじみた世界が天国やー言われても」
ベッド脇のパイプ椅子に腰掛けながらJがそう言ってきた。
その隣でピクニック気分の結衣とEが、ケーキ箱の中からケーキを取り出しつつきゃいきゃい騒いでいる。
って、俺の話聞いてねぇだろ。
結衣がうきるんと尋ねてくる。
「ねぇ、Kはどっち食べる? Eちゃんの手作りケーキだって」
Eがぴっと人差し指を立てて、
「甘い物が苦手なK君には特別に『タイカレーケーキ』と『インドカレーケーキ』なるものを作ってきました」
なぜカレーをケーキにした? あえてケーキにこだわった理由はなんなんだ? 見舞いの品が『カレーケーキ』って
Jが横からケーキ箱に手を突っ込む。
「よっしゃ。『タイカレーケーキ』に挑戦したる!」
「さすがJ! 男前!」
Eが手を組んで目をうるませる。
「感想、聞かせてくださいね」
俺はJへと視線を向ける。
なぁ、J。
「なんや?」
話戻すけど――さっき俺が言ったこと、Jはどう思う?
「死神の声、か。もしそれが事実やったとしたら、声掛けられてくるの怖なってくるな。もう車運転すんのやめようかな」
「えー。じゃぁ、あたしも携帯電話に触るのやめよう……」
「私も鏡見るのやめます……」
俺は両耳をふさいだ。
やめろ! みんなでノってくるなよ! 言い出した俺が悪かった! マジで夜が眠れなくなる!
「冗談や。そない言うたらMはどうするんや。電話に一切触れない生活なんてでけへんやんか。Eなんか鏡やで。鏡なんてなんぼ回避したって無理やろ」
「とくにKは睡眠でしょ? 睡眠回避とかあたし絶対無理」
「私も無理です。睡眠とぼぅーっとすることが私の全てですから」
「あえて俺らの日常生活に寄生してるってーのが向こうの手なのかもしれんな。俺も車無いと通勤でけへんところやし、仕事クビになったら何も食えんで死んでまう」
……。
俺は耳からそっと手を退けた。
なぁ。回避する方法って、本当にあるのか?
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