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俺は目を瞬かせつつ、時を止める。
「あの、体……もう大丈夫?」
「あれからみんな本当に心配したんだからね」
「今度から気分悪くなったら我慢せず遠慮なく私に言ってね。席、隣だし」
「私、保健室係だから何かあったらすぐに言って」
「無理しないでね」
「みんな無関心なわけじゃないんだからね」
「一人はみんなの為に。みんなは一人の為に。このクラスの心は一つだから。それを忘れないで」
あ、はい……。
クラスの女子からの意外な言葉だった。
みんな本当に俺のこと心配してくれていたんだなと改めて思う。
そう思うと俺は自然と口元が綻んだ。
ありがとう。ほんともう大丈夫だから。
女子たちも伝えたい事が言えて安堵したのか、気恥ずかしそうに頬を染めて笑い、その後、女子同士で身を寄せ合ってグループになり、きゃいきゃい言いながら機嫌よく席に戻っていった。
すると、ダチの福田が俺の隣で陰気にぼそりと言ってくる。
「やっぱりUMAはUMAか」
「MOUMAか」
MOUMAってなんだよ。
「なんか拝むよりマジ蹴りした方がご利益ありそうだな」
「……よし、みんなでUMAを蹴ろう」
はぁ!?
「よし、蹴ろう」
「蹴った分だけ幸せになれるはず」
何の迷信だよ、ふざけんな! あ、クソ! やられたらやり返すからな! このッ、くぬっ、痛ッ、いてぇっ! マジ蹴りやめろ、数多いだろうが! 俺だけ不利じゃねぇか!
教室に担任が入ってくる。
「席つけ。ホームルーム始める。――そこの仲良し集団、遊ぶなら次の休み時間にしろ。早く席つけ」
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