終話 仄暗い闇の底から

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 ※  朝倉の部屋は二階にあった。  俺と上田は階段を上る手前で足を止め、様子をうかがうようにして真下から二階を見上げた。  ひしひしと築年数を感じる昔ながらの和風な家。  二階の窓が全て厚カーテンで閉めきりになっているせいか、仄暗く不気味な感じが漂っていた。  その二階には朝倉だけしかいない。  昔は姉たちの部屋もあったのだが、姉たちは自立して今は物置部屋状態になっている。  だからこそ余計に水を打ったように静かだった。  長く換気をしていないせいか、漂う空気もよどんでいる。  俺と上田はごくりと生唾を飲んだ。  上田が震える声でぼそりと俺に言ってくる。 「な、なんかさ、【呪怨オンライン】みたいじゃね?」  俺は無言で上田を睨みつけた。 「ご、ごめん」  そんな上田を背後に連れ、俺は二階への階段を一歩踏み出した。  踏みしめた際、和風独特の軋む音がゆっくりと静かに鳴り響く。  ……。  静かだ。  一歩。  また一歩と。  俺と上田はゆっくりと階段を踏みしめていった。  なんだろう……嫌な予感がする。  いつもの遊びに行く感覚と全然違う。  高鳴る心臓。  緊迫した空気が張り詰める。  俺の手の中は嫌な汗でぐっちょりと濡れていた。  上田の言う通り、まるで本当に和風ホラー映画を体験しているみたいだ。  呪われているというか何かに取り憑かれているというか、そんな嫌な雰囲気が漂っている。  いつ二階に白い服を着た女幽霊が佇んで居ても不思議じゃない。  ――ようやく階段を上り終えて。  俺と上田は二階の小さな踊り場で足を止めた。
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