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階段近くの踊り場で一旦足を止め。
俺は上田を先に行かせた後に階段を下りた。
それは、階段を下りている途中のことだった。
俺の耳に、朝倉が俺の名を呼ぶ微かな声が届いた。
そして――助けてくれ、と。
空耳かどうかはわからなかったが、それでも。
俺は直感のまますぐに踵を返すと、階段を駆け上り、朝倉の部屋へと向かった。
「お、おい、どうしたんだよ!」
上田が遅れて俺の後を慌てて追ってくる。
俺は無我夢中に朝倉の部屋へ駆けつけると、すぐさまドアノブに手をかけた。
するとさっきまで鍵のかかっていたはずのノブは簡単に回り、ドアは何事もなかったかのようにあっさりと口を開けた。
ドアが開いたことで、俺は勢いのままに朝倉の部屋の中へと駆け込んだ。
そして部屋の真ん中で足を止める。
遮光カーテンで窓を仕切られた薄暗い部屋の中。
見回せど、朝倉は部屋のどこにも居なかった。
え、な!? どういう──
直後、ゾクリと嫌な悪寒が俺の背中を走る。
同時に背後でドアがいきなり激しく音を立てて閉まった。
俺はびくりと身を震わせる。
次いで鍵のかかる音が聞こえてきた。
ドアの向こうから上田がドアノブを回しながら、何度もドアを叩く。
「おい、いったいどうしたんだよ! なんで閉めるんだよ!」
俺は慌ててドアに駆け寄るとノブを回した。
――開かない!?
よく見ればこのドアには内鍵も外鍵もついていなかった。
俺はドアを叩いて叫ぶ。
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