終話 仄暗い闇の底から

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 上田! 俺の声は聞こえているか! 「……!」  ドアの向こうから上田の一方的な声が聞こえてくるだけ。  聞こえていないのか、それとも聞いていないのか。  俺はすぐに行動を切り替えて激しくドアに体当たりする。  しかしドアはビクともしない。  クソッ! なんなんだよ、これ! どうなっているんだ!?  さっきから背中に走る悪寒が止まらない。  嫌な予感に全身が総毛立つ。  俺は必死になってドアを叩き続けた。  上田! こっちからだとドアが開かない! 警察か誰かを呼んできてくれ! 早く!  ふと。  部屋のどこからかパソコンが起動する時に流れる音楽が聞こえてきた。  俺は動きを止める。  一旦ドアを叩くのを止め、そして恐る恐る音のする方へと振り返った。  部屋の壁際隅に置かれた勉強机が一つ。  その机上でパソコンが一人でに起動を始めていたのだ。  カリカリと処理する音がパソコンから聞こえてくる。  やがて画面が立ち上がり、マウスポインタがゆっくりと画面を走っていく。  インターネットのアイコンの上で止まり、そのアイコンを一人でにクリックする。  ネット画面が開いて、大手検索サイトが画面に現れる。  しかし、すぐにそれはボロボロと蝕まれるように崩れていき、闇のように真っ黒い画面へと変わった。  何かに操られるように、キーボードが凹凸を繰り返し、画面に文字が打ち込まれていく。  血のように赤く垂れた文字が一つ一つ、文字を綴る。
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