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走っている俺の後ろを一匹の子猫がとてとてとついてくる。
ずっと、である。
無視していればどこかに行くだろうと思っていたのに、ついには交通量の多い表通りまでついてきた。
原因はわかっている。
俺がパンをくわえていたからだ。
ちょっとそこらの公園先で目が合っただけなのに。
猫は飼い猫なのか、鈴の首輪をつけていた。その首輪の鈴がさきほどからずっとチリンチリンとうるさく音を鳴らしている。
俺はちらりと子猫に目をやった。
諦める様子のない子猫。ずっと俺の後ろをついてくる。
やがて俺は走る速度を少しずつ落とし。
根負けしてとうとうその場で足を止めた。
俺が足を止めたことで子猫が甘えるように駆け寄ってきて俺の足にまとわりついてくる。
……。
俺はため息を吐くと、仕方なく口にしていたパンを手に取った。
腰を下ろして路地に座り込み、パンを小さくちぎって子猫に与える。
ほら、食えよ。
子猫は嬉しそうに──俺にはそう見えた──与えたパンを口にくわえた。
そんな時だった。
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