第14話 気が付けば……。

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2022/05/08 10:17  ※  どうやら時間が必要だったのは俺だけだったようで。  カルロスは何も事情も聴かずに、白の騎士団の居場所だけを聞いて家を飛び出していった。  とことん元気な野郎である。  俺は、白の騎士団に関わりたくないということもあったし、何よりもう少し情報を知りたかったのでここに残るした。  カメの中からおっちゃんを回収して、元の定位置──頭の上に乗っけて、コノハを膝に抱いてベッドに腰かけて落ち着く。  リグが俺に訊ねてくる。 「あなた、名前は? どこから来たの?」  ……。  当然と言えば当然の──普通の質問だった。  だけど俺にはそれを答えることが出来ない。  間を置いて、答えに迷っておっちゃんに助言をもらおうと思ったが、嘘をつけと言われても俺には無理だった。  良い案も浮かばず迷った末に、正直に無難な答えをする。  俺の名はケイ。  【水の都(シーシャ・タ)】からキャラバンの一員として働いていたんだけど、途中でトラブルに見舞われてキャラバンの仲間とはぐれてしまって……。  キャラバンの人たちが今どこに居るかは知らないよな?  リグが悲しそうな目で俺を同情してくる。 「ごめんなさい。この村ではキャラバンの行方は分からないと思うわ。  ううん、村じゃなくてもキャラバンは野盗に狙われる危険性があるから、そういうのはキャラバン内でしか分からないことなの」  そう……なのか。 「運が良ければキャラバンと合流出来るかもしれないけど、そういう話はあまり聞かないから、もう諦めるしかないと思うわ」  ……。  俺は膝に乗っけていたコノハを撫でる。 "ママ、お腹、すいた"  うん、そうだよな。コノハは俺を助けてくれたし良く頑張ったもんな。    俺はリグに訊ねる。  助けてもらった上にお願い事言ってほんと悪いとは思うんですが、  ここに木の葉を売っている場所があれば── 『お前、金は持っているのか?』  あ……。  おっちゃんからの指摘で気付く。  俺は言葉を濁して、申し訳なく上目で訊ねる。  いや、あの……実は俺、その、持ち合わせなくて……  できれば木の葉がこの家にあれば……残り物でもいいんで分けてもらえたらなって……。 「何に使うの?」  この小竜の餌にしたくて。木の葉が大好物なんです。 「それならあるわよ」  え? あるんだ……。  ここは砂漠で、植物も枯れ干し、水も貴重で。  てっきり無いものだとばかり思っていたのだが、普通にあると言われて俺は驚きを隠せなかった。  リグがその場を離れ、幾つものカメが置かれた場所へと向かう。  そして小さなカメにたくさんの木の葉が入ったモノを持って戻ってきて、俺にそれを差し出してくる。 「どうぞ。全部持って行ってもいいから」  え、ええ、え? ……いいんですか? こんなに。 「餌に必要なんでしょう? あ。携帯用の皮袋をあげるからそれに詰めて行くといいわ」  え、なんでそんなに親切なんですか?  ここは砂漠で、植物も枯れ干し、水も貴重なのに。  水の皮袋一つでギスギスした雰囲気を過ごしてきただけに、リグの親切な優しさが俺にとって驚きだった。  まるで夢心地のような──今まで色んな人に冷たくされたからだと思うが──、そのふわっとした軽い返事には本心を疑ってしまう。  あの……もしかして、この村では客人を最大限に無理してでももてなすような決まり事でもあるんですか? 「……?」  あ、いえ、その……ここは砂漠で、植物も全然なくて、水も貴重なのに、どうしてこんなに…… 「水は井戸水から豊富に湧き出ているし、森も近くにあるわよ?」  
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