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2022/05/08 15:53
※
リグさんの案内で村の中心地となる広場へと着いた俺は、村人に混ざって白騎士の人数が多くなっていることに気付いた。
リグさんの説明によると、もうすぐここで新しい巫女の洗礼式があるらしい。
たしかに他と比べて、ここの広場は一際賑やかだったし、飾り付けも祭りって感じでたくさんあってすごかった。
広場の中心地では、石で緻密に作られた儀式用の台座が置かれている。
優に4,5人くらいが挨拶できるほどのスペースとなっており、そこに一人の踊り子さんらしき格好の女の子が座っていた。
高い位置で結んだ長い髪を馬の尻尾のように垂らして、褐色肌のかわいい顔に妖艶なタトゥーを施した、ちょっと特別待遇な女の子。
きっとあれが──
「あの子が今度新しく神聖巫女になられる御方よ。
代々この村でその血を受け継がれてきている伝統の精霊巫女なの。
この村を守り、そして行く行くはリディア国全体に富と繁栄をもたらす象徴となる運命を背負った子よ。
羨ましいわね。私もそういう運命のもと、聖なる妖精に生まれたかったわ」
リグさんも充分きれいな人だと俺は思う。
慰めているわけではなかったけど。
リグさんは俺のその言葉にほんのりと嬉しそうに笑みをこぼした。
ふと。
台座の傍で独特な民謡楽器を鳴らし、演奏が始まった。
その音楽に合わせて台座に居た神聖巫女が立ち上がり、舞を踊り始める。
まだ小さい子なのにその踊りはとても美しくも妖艶で、大人顔負けのすごさだった。
何も分からない俺でも思わず感嘆をもらしてしまうほどだ。
そんな周囲がうっとりと見惚れてしまう舞台の最中で事件は起きる。
一人の赤髪の少年が台座に乱入してきたのだ。
音楽は乱れて止まり、女の子がハッとしたような顔で踊りを止めて呆然とする。
少年は構わず女の子の手をしっかりと掴んで、
「行こう、ミリア!
シヴィラの言う事なんか信じるな! オレが守ってやるから、だから──精霊巫女なんてなるな!」
え……?
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