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2022/05/08 16:45
いきなりどこからともなく俺の前に現れたカルロスが長い金髪を振り乱して俺の腕を掴んできた。
尋常じゃないその表情からはよほど切羽詰まったことがあったらしい。
しかしなぜ俺を頼ってくるんだ?
勇者なんだから白騎士たちのところへ戻ればいいのに。
カルロスが息切れながらに俺に言う。
「た、大変なんだ、僕の話を聞いてくれ!」
いや、その前にちょっと落ち着いてくれないか?
「それどころじゃないんだ! 変なんだよ、みんなが!
白の騎士団が誰一人として僕のことを知らないと言うんだ!
おかしいと思わないか?
僕はクトゥルクに選ばれし勇者カルロスなんだぞ」
……今までがずっと自称だったということは考えられないか?
俺は冷静にそうツッコんだ。
しかしカルロスが首を横に振って否定してくる。
「違う、そうじゃないんだ。聞いてくれ。
僕の両親の名を出したら、白騎士の奴らが何て言ってきたと思う?」
いや、知らねーよ。そんなこと。
「僕の父親がまだ結婚してなくて現役の勇者だっていうんだよ!
こんなこと信じられるかい?」
『そんな馬鹿な!』
おっちゃんが俺の頭の中で慌て出す。
俺はさっぱり事情が読めなかった。
おっちゃんが頭の中で言葉を続けてくる。
『だったらやっぱり、さっきの白騎士は昔死んだはずのアイツなのか……?』
え? 死んだはずって……?
『これはヤバイことになったぞ。
どうやら俺たちは過去にタイムスリップしてしまったようだ。
何が原因かは分からんがログアウトは出来ないと思え』
え、ちょっと待てよ……嘘だろ!
じゃぁさっきのミリアって少女は、本当に過去のミリアってことなのか?
いったいどうすればいい?
どうすれば俺たちは元の時代に戻れるんだ?
『知らん。とにかくお前が砂漠で会った【ミラン】って人物を探すしかない。
きっと元の時代に戻る方法を知っているはずだ』
絶望的に。
俺はその場に崩れるように膝を折った。
2022/05/08 17:01
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