第1章

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. そんなBB弾みたいな、生易しいもんじゃなくって。 もっとこう…容赦ないマシンガンみたいな。 怒涛の唸りをあげるガトリング砲みたいな。 いっそのことそんな雨が、この地表の全てを蜂の巣にしてくれたらいいのに。 そんなことを考えながら、あたしは部屋の畳に寝転び、ナメクジみたいにネロネロうねくっていた。 ハンガーには、苦節の受験を乗り越え、晴れて勝ち取ったばかりの制服。 棚には、高校入学のお祝いに叔父さんに買ってもらった、ティガレックスのフィギュア。 そんなつい先日までの春の朗らかさに、 6月の長雨は、突然バケツでもって盛大に水をぶっかけやがったんだ。 ほんの、つい一昨日のことだ。 駅前通りでたまたま目撃した優奈の傘の中には、 寄り添うように密着して歩く、男子の背中があった。 高校生活始まって早々、親友につけられた差がどれほどのものかと、 あたしは薬局のケロヨンに隠れて様子をうかがった。 どうせアイアイの相手なんかお猿さんだろうと、僻み根性丸出しの想定。 それを雷鳴のように撃ち裂いた、彼の横顔。 誰がどっからどう見たって、 それはあたしのトキメキランキングナンバー1、 サッカー部エースの西村先輩に他なからかったのだ。 ショックで頭が真っ白になって、 その後無気力と苛立ちが交互にやってきて、 結果わたしは今こうして、畳に生えた巨大なカビと化している。 これだから雨は、子供の頃から嫌いなんだ。 特にこんな休日の雨は、物凄い損した気分になったのを覚えてる。 楽しみにしてた子供会のソフトボール大会が雨天中止になった時、わたしは家中を暴れ狂って、泣き喚いたっけ…… .
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