第1章

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. ますますわからない。 あのソフトボール大会に、コウちゃんはそんなにまで何を賭けていたのか? 「ねぇコウちゃん、なんでそんなにソフトボール大会やりたかったの? そりゃああたしだって、すっごい楽しみにしてから、ショック大きかったけどさ。 何もコウちゃんまで……」 少しの沈黙の隙間を、穏やかに埋めていく雨音。 店先で濡れる紫陽花は、曇天にもくすむことなく、より鮮明な色彩を際立たせてる。 やがて聞こえたコウちゃんの声は、さっきよりも随分と小さかった。 「だって、あれで最後だったろ? 友梨と一緒に、野球の試合で盛り上がれるのって。 中学になってまで、一緒に野球して遊ぶ男女なんて、普通いないし」 あたしの手が止まった。 洗面台に顔をつけてる、コウちゃんの表情はわからない。 そしてコウちゃんから次に出たのは、 ──きっとこの後頭部の裏は、もの凄い照れ顔── そう容易にわかるような台詞だった。 「俺が野球部入ったのはさ、また友梨に、応援してもらいたかったから…ってのもあるんだ… サッカー部ばかりじゃなくって、野球部の俺の活躍もさ…もっと見て欲しくて…」 あたしの胸のキャッチャーミットで、およそ150キロの豪速球が、 “ズバンッ!” と音を立てた気がした。 ど、どういうことだろう? 今の言葉、なんだか意味ありげに聞こえてしまうのは、乙女ゲームのやりすぎだろうか……? 動揺があたしの手をどんどん速くしていく。 コウちゃんの頭が、摩擦熱で発火しそうなくらい激しいジョリジョリ音を放っている。 バクバクの心臓。 戸惑いながらも、聞き返さずにはおれないその真意。 コウちゃんは小さい頃から身近すぎて、あんまりそういう意識をしたことなかったけど… 顔だって、どちらかと言えばイケメン寄りだし…ハゲだけど。 性格だって、ぶっきらぼうだけど本当は優しいのを良く知ってるし…ハゲだけど。 「コウちゃん…それってつまり… あたしのこと……」 緊張しながら聞いてみたら、 コウちゃんは少しの躊躇いを置き、 そして意を決したように、声を張り上げたのだった。 .
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