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鏡には、コウちゃんの頭をタオルでゴシゴシ拭くあたしが写っていた。
その自分の口元に、ほんのりと笑みが浮かんでるのに気づいた時、
あたしはコウちゃんに、とびきりの明るい声で言っていた。
「ねぇ、コウちゃん、明日の日曜日さぁ、ひさびさにキャッチボールしよっか?」
「明日?
バァカ、天気予報じゃあ明日も雨だよ」
「そうなの?
じゃあ、またてるてる坊主作る?」
「はぁ?
子供じゃあるまいし、今時そんな迷信なんて…」
「あはははははっ!
あはははははぁーっ!」
いきなりお腹を抱えて笑い出したあたしを、コウちゃんは驚いて振り向いた。
わけがわからず、ポカンとするコウちゃんに、あたしは笑いながら言ってやったんだ。
「てるてる坊主、迷信じゃないよ。
だってあたし、
晴れたしっ!」
コウちゃんが外を見向き、怪訝な顔であたしに言う。
「何言ってんのおまえ?
まだ雨降ってんじゃん…
それに…てるてる坊主なんてどこもないじゃん」
「いいや、あたしは晴れたっ!
てるてる坊主なら、バッチリ鏡に写ってるしっ!
だから明日は、雨が降ろうが槍が降ろうが、キャッチボール決行だっ!」
さっぱり意味がわからないコウちゃんは、まるで“へのへのもへじ”みたいに素っ頓狂な顔。
丸坊主な頭。
そして、首から体をすっぽりと包み込んだ、真っ白なヘアーエプロン。
なんか、改めて気づいた。
あたしにはすぐ近くに、こんな愉快な幼なじみがいたんだって。
どんな時でも笑顔になれる、素敵な“てるてる坊主”がいてくれたんだって。
外は雨。
紫陽花の葉っぱの上で、楽しそうに弾んでいる雨粒。
ガラスに張り付いた水滴達が、駆けっこするみたいに我先にと下へ伝ってゆく。
てるてる坊主
てる坊主
明日も元気に
しておくれ
~了~
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